2年埼玉の市中病院で初期研修をした後、僕は少し東北で医療ボランティアをし、南米を旅しながらボランティアをしていた。そして1年あまりの世界放浪を経て日本に戻った。医師としてのブランクがあり不安も多かったが、旅やボランティアを通し人々の絆や生命のかけがえのなさを学び、人や命としっかり向き合って働ける職場を探したいと思った。そして、ネットの情報をたよりにひょんなことから徳之島に流れ着いた。
 来てみてすぐに、ここだ!と思った。医療スタッフがみんな生き生きと、楽しそうに働いている。0〜100才まですべての年齢層、内科、小児科、皮膚科、整形外科、耳鼻科等のほとんどの科を区別することなく一人の人間として患者を診ている。外来→入院→往診と一人の人すべてを 自分が診ることができる。そんなところにぼくは惹かれた。実際働いてみると、ほんとに雰囲気の良い職場で職員みんなが島を大切に思っていることが伝わってきた。職場の楽しい雰囲気はそのまま患者さんを巻き込む。それ自体が患者さんの治療にもなっているのだ。そして、なによりも患者さんとの距離が近い、元々、患者さんたちによって建てられた病院なので、自分達の病院といった意識が強い。若い先生の診療にもいやな顔一つせずに『先生がんばって』とよく言われる。今現在、そんな病院は日本全国でいくつあるだろうか?患者が病院を信頼してはじめて治療が始まるのだ。  
 また、長寿の島ということもあり患者さんから学ばされることも多い。90代になっても畑仕事をしているような本当に元気なお年寄りが多く、こちらもうかうかしてられないなといつも思わされる。来る前は南の島でゆったりと診療をしている感じを思い描いていたが、実際は病院の中は都会の病院顔負けなぐらい慌ただしく症例の種類も豊富だ。ただ都会と違うのは診療所を一歩出るとゆったりとした時間の流れに癒される。都会の大病院のように最先端の医療を提供できるわけではない、限りある検査や治療法でなんとかやっていかなければならない場合もある。ガイドラインに沿った治療だけではなく個人個人にあった検査、治療法を考えることも多い。病気を診るのではなく患者さん(人間)を診るという忘れ去られがちな医療の原点を感じることができるのもここの魅力だ。

 島での医療に少しでも興味ある 人は一人でも多く見学、研修に来てほしいと思う。ここは自分を試すことができるし、いろいろな意味での成長が保証される。それを受け入れてくれる懐の広さがあるし若い医師を育てる土壌がここにはあると思う。

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